新型コロナウイルスが蔓延し始めた昨年の春夏頃から、ペットショップやアニマルシェルターに異変が起きています。例年、保護犬や保護猫で溢れかえり、殺処分も行われている施設に動物が足りない?ペット業界で一体何が起きているのでしょうか。

新型コロナでペットブーム到来?
「外出自粛」「テレワーク」「ソーシャルディスタンス」など人との接触をタブーとするこの新時代、ペットを飼う人(特に”新しく”飼う人)が急速的に増えているのをご存知ですか?確かに、私たち自身の安全のためとは言え、毎日「おうち時間」を強いられている今、癒しを求めるてしまうのも納得がいきます。
一般社団法人ペットフード協会が毎年発表している「全国犬猫飼育実態調査」によると、犬・猫の飼育頭数は近年微減ないしは横ばいが続いている。
一方、「1年以内の新規飼育者」の飼育頭数は2018年を底に増加傾向にあり、2020年は犬が前年比14%増、猫が同16%増と前年に比べ増加率が高まっているという
THE OWNER 「コロナ禍でペット市場規模が約1.6兆円に? 加速するペットブームの懸念点」より
心なしか、私の周りでも以前にも増してペットを連れている人を見かけるようになりました。いつもの道を歩くだけでも、「こんなにワンちゃん連れている人がたくさん!」と驚くこともざらにあるようになってきました。みなさんもそう感じたことはありますか?しかし、ペットを飼う人が多くなったことになんだか嬉しさを感じつつ、やはりその人口が増えると水面下にあった問題が大きくなるのも避けられません。ペットブームの裏側で多数の問題が浮き彫りになってきました。
懸念点① 飼育放棄
ペットブームで最大に懸念されるのは、やはり飼育放棄です。これは特に最近ニュースでもよく取り扱われるようになってきた問題だと思います。すでにペットを飼っていらっしゃる方々はご存知の通り、動物を飼う、ということは家族の一員が増えることと同様に、愛情はもちろんですが、たくさんのお金と時間を要します。しかし、ブームに乗っかった安易に、もしくは短期的な考えで飼い始めたものの、「思ったより飼ってからお金がかかる」「散歩もご飯も躾も…世話が面倒」「吠える」「懐かない」など、人間の身勝手な理由で飼育を放棄してしまう人が多いのが現状です。結果、家族になって早々に動物達が苦しめられ、最悪のケースでは死んでしまうことも、残念ながらよくあります。
もちろん、この飼育放棄問題の提起に伴い、飼い主に限らず、ペットの繁殖を行う悪質なブリーダーや販売業者の問題も明るみに出てきました。利害重視で母体の健康を脅かす無理な多出産を強制したり、不衛生な環境下で出産・飼育・管理をされている動物達が後を絶ちません。国もその状況を考慮し、対処すべく、新しい政策を打ち出しています。詳しいことは、以前のアニマル リエゾンの記事「犬猫、数値規制案について」で紹介しています。そちらを参考までにして、私たちがこれからどう行動していくべきなのかをもう一度考える必要がありますね。
懸念点② ペット泥棒
さらに、近い将来で懸念されるのは、先ほど言及したペット需要に伴い、日本ではそれほど横行していないようですが、海外では増えてきている「ペット泥棒」なるものです。最近では、かの有名なレディー・ガガさんの愛犬を誘拐したとして、5人がロサンゼルス市警に逮捕された事件もありました。
事件の簡単な概要:2月24日、ガガさんの愛犬であるフレンチブルドッグ3匹を代わりに散歩していたペットシッターが、突然車に乗って現れた男達(容疑者たち)に銃口を突きつけられ、犬達を渡せ、と要求されました。彼は抵抗しましたが、それに対し容疑者の1人が発砲し、結局2匹を奪って逃走したのです。
ペットシッターのライアン・フィッシャー (Ryan Fischer)さんは、胸への発砲により肺の一部を摘出する手術をしたものの、今は退院し、順調に回復しているといいます。しかし、彼は「生死の境を彷徨った」と後に自身のSNSで明かしており、か弱いフレンチブルドッグ2匹が乱暴に連れ去られた、というのはとても胸が痛む事件に変わりはありません。
「盗まれた」理由として、飼い主がガガさんだと知っての犯行というよりは、フレンチブルドッグ自身の価値の高さにある、と警察は見ているようです。少なくともアメリカでこの犬種はとても人気で、平均的な販売価格も40万ほどするので、盗んで転売する、という目的で犯行が行われた、という説が濃厚のようですね。
その後、ロサンゼルス市警は18歳、19歳、27歳の男性3人を殺人未遂と強盗の容疑で、19歳の容疑者の父親(40歳)と、事件の2日後に犬達を警察署へ届けて実質自首をした女性(50歳)を、殺人未遂の共犯として訴追したと明らかにしました。
ペットを誘拐したら、どんな罪に?
ここまでこの「レディー・ガガさん、愛犬誘拐事件」を調べるにあたって一番驚いたのは、問われる罪の重さ、です。確かに、大切な家族の一員が誘拐されたのですから相当の報いを受けさせなければ被害者(飼い主もワンちゃんも?)は納得しないでしょう。しかし、まさかの「殺人未遂」は想定外でした。この罪の重さは、アメリカという国でペットの命がそれほど尊重されている印だとも言えますね。
さて、日本でペットを誘拐したら、どうなるのでしょう?もしあなたのペットがいきなり連れ去られたら?あなたはどんな罪に問われることを期待しますか?「殺人未遂」まで行かなくても、「誘拐罪」とかになるんじゃ…と少なくとも私は思います。しかし、残念ながら日本の刑法のもと、犬などのペットを転売の目的・自分で飼う目的で誘拐したとしたら、それは「窃盗罪(10年以下の懲役、50万円以下の罰金)」なのです。さらに、盗んだペットを転売しても、その行為自体は犯罪になりえません。その理由としては、犬などのペットが法律的に「物(財物)」と認識されているため、「人」を対象として成立する「略取・誘拐罪」などは、ペット相手には成立しない、とのことです。
以上の事実や、悪質なブリーダー・販売業者問題からわかるように、ペットに関する日本の刑法の現状には限界があります。だからといってすぐに法を改正する!とはいきませんが、しかし、それだけに私たち個人が、一匹一匹の命の重さと、命を預かる責任を今一度強く認識することが、少しでも彼らを守ることに繋がるのではないでしょうか。